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それでも私は Though I'm His Daughter

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作品紹介

それでも私は Though I'm His Daughter

娘なことは、罪ですか？

2025/06/14(土)公開　

1995年3月、日本を震撼させた地下鉄サリン事件。その首謀者の娘として生まれた松本麗華は父が逮捕された当時12歳。以来、どこに行っても父の名、事件の記憶、「お前はどう償うのか？」という問いがつきまとう。人並みの生活を営もうとするが、定職に就くことや銀行口座を作ることさえ拒まれる。国は麗華に対して教団の「幹部認定」をいまだに取り消さず、裁判所に訴えても棄却されるーー。犯罪報道に長く身を置いてきた長塚洋監督が考え続けた当事者たちの事件後の人生。松本麗華と出会い、その答えを求めて6年間記録した。

ストーリー

2018年2月。34歳の松本麗華は、34年前に保険金殺人で弟を奪われた原田正治の訪問を受け、対話に臨んだ。麗華の父親はあのオウム真理教の元教祖松本智津夫。いまは獄中の死刑囚だ。原田は「あれだけの逆境の中で若いのに自分の信念を捨てず力強く生きてきた麗華さんを、この目で実感しようと思った」と訪問の理由を語った。被害者家族と加害者家族という、真逆とも言える二人。だが、「当事者」としての痛みで共感し合う。これが、6年に及ぶ麗華への取材の始まりだった。麗華の苦難の人生は、地下鉄サリン事件が起きた1995年以来、ずっと続いてきた。日頃から命の大切さを説いていた教団の信徒たちが起こした数々の凶行に、衝撃を受けた麗華。父親が裁判の途中で言動に異常を来し、二審の公判が開かれないまま死刑が確定した。彼の口から直接聞けなかったため、彼が犯罪を命じたことも麗華はまだ受け入れ切れない。死刑の前に病気を治療して事実を語らせて欲しいという彼女の願いに識者らも賛同し動きを起こすが、それは外部からの攻撃も招くことにもなった。他方で被害者遺族への感情にも苦しみながら、麗華は諦めず真相を求め続ける。だが2018年7月、突然、松本智津夫を含む死刑囚13人の死刑が執行された。世間からの攻撃もエスカレートしていき、麗華は人々が父親の死を望んだと感じ、極度の悲しみと絶望のうちに生きることになる。それでも人並みの生活を営もうとすると、定職に就くことや銀行口座を作ることさえ拒まれる。国は麗華に対して教団の「幹部認定」をいまだに取り消さず、裁判所に不当を訴えても棄却されてしまう。苦難の始まりからずっと続いてきた、世間からの過酷なバッシング。10代の頃の麗華が社会の中で生きて行く決断をして自ら教団から抜け出せるまでに事件後4年がかかったのも、その過酷さゆえだった。しかしその後も定住を許されず、何か所も転々とする日々が続く。さらに心理学を勉強するため大学進学を目指すと、ことごとく入学を拒否された。弁護士の支えでなんとか入学を手にすることが出来たが、海外へ出国も出来ず、"普通の"人たちが手に入れられる自由は奪われたままだ。家族間の亀裂も麗華にとって大きな苦しみだ。かつて仲のよかった妹は差別から逃れるため、父親との絶縁を宣言。その妹はのちに、麗華と暮らす姉との間で父の遺骨の所有をめぐり争うことにもなる。また教団の後継団体と今もつながる母親とは、街で見かけても声もかけられない関係が続く。2019年には協力者たちと共に、生きにくい人々を支援する団体を立ち上げる。麗華の陥った状況を皆で支えることがきっかけだったが、今では精神的に不安を抱えた方などが相談する場となっている。ここでは大学で学んだ心理学も活かし、今までの経験を元にアドバイスもしながら「こころの伴走者」となるべくカウンセラーとして働いている。2023年、40歳となった麗華はずっと望んでいた旅ー父の故郷へと向かうが、そこで暮らす親族のかかえる重い苦しみに直面し、苦い涙を流す。不安定な心を抱えながらも懸命に「松本智津夫の娘」でなく「松本麗華」自身としての人生を求め、新たな挑戦に身を投じていく。「私の個人的な頑張りが誰かを勇気づけることになったらとてもうれしい。それで私は勇気をもらっている」

キャスト

スタッフ

監督：長塚洋

作品データ

制作年

2025

制作国

日本

配給

Yo-Pro

上映時間

119分